交通事故を原因として負傷した場合に被ってしまう一般的な損害項目は、治療費、休業損害金、傷害慰謝料、通院交通費、付添看護費といったものです。
このうち、加害者側との間で問題となりやすいものは、治療費、休業損害金、傷害慰謝料です。
これらの損害項目が問題になった場合の当事務所の取り組み方をご紹介します。
治療費に関する取り組み
「怪我はもう治ったはずだ」「既に症状固定の状態に至ったと考えます。」
このような理由をもって、加害者側は、被害者が治療中であるにもかかわらず、治療費の支払いを一方的に中止することがよくあります。
確かに、傷病が症状固定の状態に至っているのであれば、その後の治療費の支払いを請求することができません。
しかし、症状固定の状態に至っていないのであれば、もちろん治療費の支払いを請求できます。
当事務所は、依頼者に対する治療費の支払いを中止された場合、医師に対して、依頼者の傷病の状態や今後予定する治療方法等に関する質問書を作成し、回答を求めます。
その回答内容が依頼者の傷病について今後の治療が必要であると判断させるようなものであれば、それを加害者側に提出し、治療費の支払い再開を求めます。
医師の回答をもってしても、加害者側を説得できない場合には、依頼者との協議により治療の続行をするか決定します。
治療を続行することになった場合には、治療費は依頼者にて支払わざるを得ませんが、最終的な解決の段階(示談交渉や裁判など)で加害者側に請求していくことになります。
休業損害に関する取り組み
休業損害は、基礎収入額(事故当時の収入額)×休業相当期間の算定式で算定されます。
基礎収入額についてよく問題となるケース、問題点、当事務所の取り組み方は以下の図のようなものになります
被害者の属性 | よくある加害者の主張 | 当事務所の取り組み |
給与所得者 | 源泉徴収票がないのであれば 、給与明細書どおりの収入額 があったとは認めない。 | 依頼者から提出を受けた証拠(例えば、家計簿や預金通帳)に基づいて 、給与明細書通りの収入額があったことを立証し、給与明細書どおりの 収入額を前提とした休業損害金を請求する。
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自営業者 | 確定申告書に記載されていな い収入額については、休業 損害として認められない。 | 依頼者から提出を受けた資料(例えば、帳簿や預金通帳などをもって、 確定申告書に記載された収入額が実際の収入額ではない旨主張し、実際 の収入額を前提としての休業損害金を請求する。 |
会社役員 | 役員報酬の全額を休業損害金 として支払う義務はない。 | 役員報酬のうち損害賠償の対象となるのは労務対価部分(利益配当 部分は保障の対象とならない。)。 依頼者が就労する会社の規模や職種、依頼者の会社における地位、労務の 内容、同年代の平均収入額などに基づいて、労務対価部分を適切に把握し、 労務対価部分に対する損害賠償を請求する。 |
主婦 | 5700円しか支払えない。 同居する母や娘がいる場合に は5700円も支払えない。 | 家事従事者の基礎収入額は全労働者の平均賃金額(日額8500円〜90 00円程度の金額)をもって算定するべき旨主張する。 同居する母や娘がいる場合でも、依頼者が一人で家事をこなしていた場合 には、その旨の証明に努め、全額の休業損害金を支払うよう請求する。 |
就職希望者 | 事故当時、収入がなかったの だから、休業損害金は支払う 義務はない。 | 近日中に就職するはずであったことを立証し、就職していたら得られてい たであろう金額を請求する。 |
また、休業損害期間も非常に問題となりやすいところです。
被害者の生活保障の観点から、休業損害金の内払いを了解してもらえる傾向にありますが、事故から2ヶ月や3ヶ月程度が経過したころに、突然保険会社から「休業損害金はもう支払えない。」と告げられ、休業損害金の支払いが中止されてしまうケースも少なくありません。
当事務所では、依頼者からの事情聴取や医師からの意見を求めるなどの手段をもって、依頼者が未だに休業せざるを得ない状態であることの証明に努め、休業損害金の支払いを継続するよう交渉します。
保険会社が休業損害金の支払いの継続に応じなければ、最終段階(示談交渉や訴訟)の中で請求していきます(なお、緊急性がある場合には、裁判所に仮払い仮処分を申し立てることによって、休業損害金を仮に支払ってもらうことができる場合があります。)。
傷害慰謝料に対する取り組み
傷害慰謝料の算定基準は、一つではありません。
主な基準として、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準があります。
一般的に、裁判基準、任意保険基準、自賠責保険基準、の順に算定した慰謝料額は高額になります。
さて、任意保険会社は、慰謝料額を算定する際、自賠責基準や任意保険基準を使用します。
よって、任意保険会社が算定した慰謝料額は、裁判基準で算定した金額よりも低いものになりがちです。
当事務所は、依頼者の慰謝料額を算定するにあたって裁判基準を使用します。
任意保険会社は「まだ裁判をしていないのだから、裁判基準で算定した慰謝料額の全額を了解することはできない。」と回答するのが通常ですが、交渉により、合意に至る金額を裁判基準で算定した慰謝料額にできるだけ近づけることができるよう努めていきます。
任意保険会社が依頼者が納得することのできる金額を了解しないのであれば、訴訟提起か紛争処理センターへの申立てを行っていきます。