等 級 | 障害の態様 | 自賠責保険金額 | 労災保険金額 |
第1級 | 以下のいずれかの障害が残存している場合に認定される。 ①重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの ②高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの | 4000万円 | ・障害補償年金:給付基礎日額の313日分 ・障害特別支給金:342万円 ・障害特別年金:算定基礎日額の313日分
|
第2級 | 以下のいずれかの障害が残存している場合に認定される。 ①重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの ②高次脳機能障害による認知症、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による関しを必要とするもの ③重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常動作は一応できるが、一人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの | 2590万円 | ・障害補償年金:給付基礎日額の277日分 ・障害特別支給金:320万円 ・障害特別年金:算定基礎日額の277日分 |
第3級 | 以下のいずれかの障害が残存する場合に認定される。 ①意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力、社会行動能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われているもの ②意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力、社会行動能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの | 829万円 | ・障害補償年金:給付基礎日額の245日分 ・障害特別支給金:300万円 ・障害特別年金:算定基礎日額の245日分 |
第5級 | 以下のいずれかの障害が残存する場合に認定される。 ①意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・耐久力、社会行動能力のいずれか1つ以上の能力の大部分が失われているもの ②意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力、社会行動能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの | 1574万円 | ・障害補償年金:給付基礎日額の184日分 ・障害特別支給金:255万円 ・障害特別年金:算定基礎日額の184日分 |
第7級 | 意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力、社会行動能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われているもの | 1051万円 | ・障害補償年金:給付基礎日額の131日分 ・障害特別支給金:159万円 ・障害特別年金:算定基礎日額の131日分 |
第9級 | 意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力、社会行動能力のいずれか1つ以上の能力が相当程度失われているもの | 616万円 | ・障害補償一時金:給付基礎日額の391日分 ・障害特別支給金:50万円 ・障害特別一時金:算定基礎日額の391日分 |
第12条 | 意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力、社会行動能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているもの | 224万円 | ・障害補償一時金:給付基礎日額の156日分 ・特別支給金:20万円 ・障害特別一時金:算定基礎日額の156日分 |
第14条 | MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるもの | 75万円 | ・障害補償一時金:給付基礎日額の56日分 ・障害特別支給金:8万円 ・障害特別一時金:算定基礎日額の56日分 |
等級認定は、①事故による脳損傷の有無、②障害の程度、の2段階に分けて検討されます。
① 脳損傷の有無
脳の器質的損傷には、事故による外力の作用で直接脳が損傷する場合(一次性損傷)と頭蓋内出血等により脳が圧迫されて脳が損傷する場合(二次性損傷)があります。
脳について一次性損傷あるいは二次性損傷が認められることは等級認定を受けるための原則的な要件となります。
ただし、びまん性軸索損傷の場合、事故直後の画像には異常が認められない場合も多くあります。
そこで、びまん性軸索損傷の場合は、事故直後に脳損傷が認められないという事情だけで後遺障害等級が認定されないという結論にはなりません。①一定の期間・一定強度の意識障害が存在し、②画像資料等でびまん性脳室拡大・脳萎縮の所見が認められる場合には、後遺障害等級が認定されております。
② 障害の程度
高次脳機能を、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力、社会行動能力の4つの能力に分類し、それぞれの喪失の程度を検討して、等級認定が行われます。
適切な等級認定を受けるためには、以下の各事項を明らかにするための資料の提出が必要です。
・記憶や認知に関する障害の有無・程度
・具体的な就労・就学状況、日常生活状況
・具体的な場面において生じている生じている支障の内容
■日常生活状況の報告
被害者の、人格や情動の変化、社会的適応性の変化を的確に把握するためには、経過診断書、後遺障害診断書、カルテなどの医学的書類を提出するだけでは足りません。
被害者と日常生活を共にして介護を担当している家族、同じ職場での同僚、同じ学校の同級生や担任教師などから、事故前後における被害者の行動の変化を具体的に聴き取り、資料とすることが必要です。
自賠責保険において主治医の意見書及び家族からの報告書の書式が用意されています。
■神経心理学的検査の留意点
人の心理的機能(意識、注意、知能、言語、記憶、視覚、聴覚など)に関する神経心理学的検査は、高次脳機能障害の内容や程度を判断するにあたって重要な資料とされています。
ただし、以下の各点に留意しておく必要はあります。
・知能指数は正常な範囲であっても高次脳機能障害が残存している例もあること
・認知機能検査(MMSE)で認知症と判断されなくても高次脳機能障害がないとはいえないとされていること
判例は、画像所見の有無だけでなく、事故直後の意識障害の程度、経時的な画像の比較などから、総合的に脳の器質的損傷の有無を判断しています。
画像所見による異常は認められないものの、事故直後の意識障害の存在から脳の器質的損傷の存在を認定した判例もあります。
等 級 | 障害の程度 | 自賠責保険基準で算定した慰謝料額 | 裁判基準で算定した慰謝料額 |
第1級の1 別表第1 | 以下のいずれかの障害を残す場合に認定される。 ①高度の四肢麻痺が認められるもの ②中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの ③高度の片麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの | 1600万円 | 2800万円 |
第2級の1 別表第1 | 以下のいずれかの障害を残す場合に認定される。 ①高度の片麻痺が認められるもの ②中等度の片麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの | 1163万円 | 2370万円 |
第3級の3 | 中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護までは要しないもの | 829万円 | 1990万円 |
第5級の2 | 以下のいずれかの障害を残す場合に認定される。 ①軽度の四肢麻痺が認められるもの ②中等度の片麻痺が認められるもの ③高度の単麻痺が認められるもの | 599万円 | 1400万円 |
第7級の4 | 以下のいずれかの障害を残す場合に認定される。 ①軽度の片麻痺が認められるもの ②中等度の単麻痺が認められるもの | 409万円 | 1000万円 |
第9級の10 | 軽度の単麻痺が認められるもの | 245万円 | 690万円 |
第12条の12 | 以下のいずれかの障害を残す場合に認定される。 ①運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの ②運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの | 93万円 | 290万円 |
麻痺の範囲、及びその程度並びに介護の有無及びその程度により障害等級が認定されます。
ただし、麻痺の範囲及びその程度は、身体的所見、MRI、CT等などの他覚的所見による裏付けが必要となります。
■麻痺の範囲について
1 四肢麻痺とは
両側の四肢の麻痺をいう。
2 片麻痺とは
一側上下肢の麻痺をいう。
3 対麻痺とは
両下肢又は両上肢の麻痺をいう。
4 単麻痺とは
上肢又は下肢の一肢のみの麻痺をいう。
■麻痺の程度について
1 高度の麻痺とは
以下のいずれかの障害を指す。
①完全強直又はこれに近い状態にあるもの。
②上肢においては、三大関節及び5つの手指のいずれかの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの
③下肢においては、三大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの
④上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの
⑤下肢においては、随意運動の顕著な障害により一下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの
2 中等度の麻痺とは
以下のいずれかの障害を指す。
①上肢においては、障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができないもの又は障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの
②下肢においては、障害を残した一下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしに階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの
3 軽度の麻痺とは
以下のいずれかの障害を指す。
①上肢においては、障害を残した一上肢では文字を書くことに困難を伴うもの。
②下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの
等 級 | 後遺障害の態様 | 自賠責保険基準で算定した場合の慰謝料額 | 裁判基準で算定した場合の慰謝料額 |
第9級の10 | 非器質性精神障害のため、日常生活においうて著しい支障が生じる場合 | 245万円 | 690万円 |
第12条の12 | 非器質性精神障害のため、日常生活において頻繁に支障が生じる場合 | 93万円 | 290万円 |
第14条の9 | 概ね日常生活は可能であるが、非器質性神経障害のため、日常生活において時々支障が生じる場合 | 32万円 | 110万円 |
・労災保険の認定方法は参考にするものの、労災保険による認定方法ほど明確なものではない。
・「脳の器質的損傷を伴わない」障害であるため、検査などによって具体的な状態をみて判定するのが困難である。
→あらゆる事情による総合判断となる。
・診断名がそのまま等級に直結するわけではない。
→例えば、PTSDと診断されたとしても等級が認定されるとは限らない。
以下、参考として、労災保険による等級認定基準を挙げておく。
■勤労している者又は勤労の意欲のある者について
等 級 | 後遺障害の態様 |
第9級の7の2 | 以下のいずれかの障害が残存する場合に該当する。 ①該当する場合その1 以下のⅠ及びⅡ両方の状態が認められるもの。 Ⅰ以下の各精神状態のうち1つ以上の精神状態が認められるもの ⅰ抑うつ状態 ⅱ不安の状態 ⅲ意欲低下の状態 ⅳ慢性化した幻覚・妄想性の状態 ⅴ記憶又は知的能力の状態 ⅵその他障害(衝動性の霜害・不定愁訴など) Ⅱ以下のいずれか1つの能力が失われている状態であるもの ⅰ身辺日常能力 ⅱ仕事・生活に積極性・関心を持つこと ⅲ通勤・勤務時間の遵守 ⅳ普通に作業を持続すること ⅴ他人との意思伝達 ⅵ対人関係・協調性 ⅶ身辺の安全保持、危機回避 ⅷ困難・失敗への対応 ②該当する場合その2 以下のⅠ及びⅡ両方の状態が認められるもの。 Ⅰ以下の各精神状態のうち1つ以上の精神状態が認められるもの ⅰ抑うつ状態 ⅱ不安の状態 ⅲ意欲低下の状態 ⅳ慢性化した幻覚・妄想性の状態 ⅴ記憶又は知的能力の状態 ⅵその他障害(衝動性の霜害・不定愁訴など) Ⅱ以下の各能力のうち4つ以上についてしばしば助言・援助が必要と判断される障害を残しているもの ⅰ身辺日常能力 ⅱ仕事・生活に積極性・関心を持つこと ⅲ通勤・勤務時間の遵守 ⅳ普通に作業を持続すること ⅴ他人との意思伝達 ⅵ対人関係・協調性 ⅶ身辺の安全保持、危機回避 ⅷ困難・失敗への対応 |
第12条の12 | 以下のⅠ及びⅡ両方の状態が認められるもの。 Ⅰ以下の各精神状態のうち1つ以上の精神状態が認められるもの ⅰ抑うつ状態 ⅱ不安の状態 ⅲ意欲低下の状態 ⅳ慢性化した幻覚・妄想性の状態 ⅴ記憶又は知的能力の状態 ⅵその他障害(衝動性の霜害・不定愁訴など)
Ⅱ以下の各能力のうち4つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残していると判断されるもの ⅰ身辺日常能力 ⅱ仕事・生活に積極性・関心を持つこと ⅲ通勤・勤務時間の遵守 ⅳ普通に作業を持続すること ⅴ他人との意思伝達 ⅵ対人関係・協調性 ⅶ身辺の安全保持、危機回避 ⅷ困難・失敗への対応
|
第14条の9 | 以下の各能力のうち1つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残していると判断されるもの ⅰ身辺日常能力 ⅱ仕事・生活に積極性・関心を持つこと ⅲ通勤・勤務時間の遵守 ⅳ普通に作業を持続すること ⅴ他人との意思伝達 ⅵ対人関係・協調性 ⅶ身辺の安全保持、危機回避 ⅷ困難・失敗への対応 |
■就労の意欲の低下又は欠落により就労していない者について
等 級 | 後遺障害の態様 |
第9級の7の2 | 身辺日常生活について時に助言・援助を必要とする程度の障害が残存しているもの |
第12条の12 | 身辺日常生活を適切又は概ねできるもの |
第14条の9 | 以下の各能力のうち1つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残していると判断されるもの ⅰ身辺日常能力 ⅱ仕事・生活に積極性・関心を持つこと ⅲ通勤・勤務時間の遵守 ⅳ普通に作業を持続すること ⅴ他人との意思伝達 ⅵ対人関係・協調性 ⅶ身辺の安全保持、危機回避 ⅷ困難・失敗への対応 |